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#介護のこと

かつてヤングケアラーだった大学生が中高生ヤングケアラーに寄り添いサポート。日本初『ヤングケアラー・メンターシップ制度』が開始!

障害や疾患のある親や祖父母、きょうだいの世話・介助をするヤングケアラー。その伴走型支援を行う一般社団法人ケアラーアクションネットワーク協会が、日本で初めて『ヤングケアラー・メンターシップ制度』を開発し、2022年3月から研修をスタートします。

この制度は、元ヤングケアラーである大学生らが、中高生の「お兄さん」「お姉さん」的な存在として聞き役・相談役(=ピアメンター)となり、グループでメンタリング(成長支援行動)を行うというもの。

以下では、その詳細をお伝えしていきます。

そもそもヤングケアラーとは? 中学2年生の17人に1人がヤングケアラー

「ヤングケアラー」という言葉にも随分と耳慣れてきましたが、この言葉が指すことを具体的に把握できていますか?

たとえば、仕事で忙しい親に代わって家事や兄弟の世話をしていたり、障害のあるきょうだいや、病気や認知症の家族の介護をしていたり等々……。
ヤングケアラーとは、このような、家事や介助・家族の世話などを日常的に行なっている18歳未満の子どもを指します。
そして、現在、中学2年生の17人に1人もの子どもが「ヤングケアラー」であることが、厚生労働省の調査によって明らかに。(出典:厚生労働省『子どもが子どもでいられる街に。』

「子どもとしての時間」を家族のケアに投げ打つひとりひとりに対する、早急かつ適切なフォローや支援の構築が、現状の大きな課題となっているのです。

※ヤングケアラーの概要や、子どもたちが直面する問題の詳細については前回記事で触れています。↓

ヤングケアラーとは?中学2年生の17人に1人がヤングケアラー。その実態と、子どもたちが抱える問題とは。最近、ニュースやテレビで『ヤングケアラー』という言葉を耳にすることが増えていませんか? 近年日本ではこのヤングケアラーと呼ばれる人たちが増加しており、隠れた社会問題に。では、このヤングケアラーとは一体誰のことを指していて、どんな問題があるのでしょうか。本記事では、この点について解説していきます。...

「良き先輩」として中高生ヤングケアラーに寄り添うための、元ヤングケアラー大学生向け研修制度がスタート

そこで、行政や自治体が行う解決型支援に加えて、政府はヤングケアラーが気軽に集う「ピアサポート」の拡充にも注力。
それに伴い、2020年からヤングケアラーに向けたピアサポートとプログラムの提供を行っている一般社団法人ケアラーアクションネットワーク協会(以降、CAN)が、公益財団法人日本財団の助成事業として開発したのが、日本初の『ヤングケアラー・メンターシップ制度』です。

『ヤングケアラー・メンターシップ制度』とは?

『ヤングケアラー・メンターシップ制度』とは、元ヤングケアラーである大学生らが、自身のケア経験を活かした相談役=“ピアメンター”になり、家族のケアをする中高生の「良き先輩」としてサポートするスキルを身につける研修制度

この研修を修了した大学生は、CANが運営する『ヤングケアラーズ探究プログラム』*に参加して、実際に中高生ヤングケアラーと対話を深め、メンタリングに携わることができます。

*『ヤングケアラーズ探究プログラム』……ヤングケアラーが家族のさまざまな課題に対応する柔軟なメンタルを育てる内容で構成されるイギリス発のプログラム。イギリスのWinchester Young Carers(ウィンチェスター・ヤングケアラーズ)の許可を得たCANが、日本人向けに改良し、2020年から中学生と高校生のヤングケアラーに提供。

仲間としての「共感力」で、中高生ヤングケアラーたちに寄り添う

ピアメンターとなった大学生の強みは、なんといっても、同様の経験をしてきた仲間(ピア)だからこその「共感力」。

「かわいそうな子」扱いされたり、「生きづらさ」にばかりフォーカスされがちなヤングケアラーたちに仲間として共感し、寄り添うことでメンタリングに貢献。そして、家族のケアを通じた気づきや発見を促します。

ある程度経験を積んだピアメンターは、希望があれば面接を受けて同プログラムの進行役になることも可能。
ピアメンターたちにとっては、単に自身のケア経験を活かせるだけでなく、コミュニケーションやチームワークづくりのスキルの積み上げの場としても、この場が活かせるのではないでしょうか。

「公平で分断がなく尊重し合える社会」を目指して

『ヤングケアラー・メンターシップ制度』の開発のほか、ケアラーやヤングケアラーの社会課題を多角的に支援するCAN。
自身も介護経験者である代表理事の持田恭子さんは、公式HP上の理事長あいさつにて、以下のように語ります。

(一般社団法人ケアラーアクションネットワーク協会 代表理事・持田恭子さん)

幼い頃から知的障害のある兄と共に育ち、35歳から親の介護が始まったわたしは、仕事との両立で悩み、施設探しで奔走し、親子分離と社会からの孤立などを経験し、適応障害と介護うつを経験しました。このような経験を経て、同じことが繰り返されないように、家族目線でケアの課題を考え、主体的に解決する必要があると強く思い、この活動を始めました。

 まずは、同じ立場のケアラー同士で語り合う場を提供し、ケアラーが自分の気持ちを整理することから始めました。その後、様々な年代のケアラーに沿った支援活動を行いました。それらの知識と経験をもとに、ケアラーが家族のケアを家族だけで抱え込まずに、自分の人生を自分らしく生きることができる社会づくりを目指して活動の幅を広げています。

一般社団法人ケアラーアクションネットワーク協会・公式HP(団体概要)より

公平で分断がなく尊重し合える社会を目指し、ケアラーたちの居場所づくりや教育プログラムの開発に注力するCANの、今後の活動からも目が離せません。

【詳細・お申込みはCAN公式ホームページまで】

CAN公式ホームページ :https://canjpn.jimdofree.com/
Twitter:https://twitter.com/can_ycstation
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCS2GWOLKM4gchisvd4B0CUA